Q1.
牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)とはどんな病気ですか。
A. 牛海綿状脳症(BSE)は、1986年に英国で確認された牛の病気です。BSEに感染した牛は異常プリオンの増殖により脳の神経細胞が死滅して空砲ができ、脳の組織がスポンジ状になることから牛海綿状脳症と名付けられました。2〜8年(通常2〜5年)の潜伏期間の後、牛は麻痺、起立不能、歩行困難などを呈し、死に至る病気です。
狂牛病は俗称で、牛がよろよろする様子を見て英国の農民が mad cow disease
と呼んだものが直訳されたものです。牛は狂っているのではなく、神経が麻痺したことによって症状を呈しているのです。
Q2. BSEは、人間にうつるのですか。
A. BSEが人間にうつると、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が発症すると考えられますが、その因果関係はまだ確定されておりません。
これまでに、英国で102名、フランスで4名、アイルランドで1名のvCJDの発症が確認されていますが、日本での発症は報告されていません(平成13年12月現在)。
英国では、脳や脊髄を食材に用いて食べていたことも多くの患者を出した原因と言われています。
Q3. どのくらい異常プリオンを食べるとうつるのですか。
A. どのくらいの量の異常プリオン(汚染された脳など)を食べるとうつるのかという研究結果ではありません。
動物実験では、同じ量の異常プリオンを食べさせても必ず発症するわけではなく、発症しないことの方が多いと推定されています。
異常プリオンは、ほとんど消化も分解もされないという性質があり、そのまま便として排泄されるか、消化も分解もされずそのまま体に取り入れられます。
ごく少量の異常プリオンを食べたからといって、必ずしも危険とは言えません。
Q4. 私たちの食べる牛肉は安全ですか。
A. 異常プリオンが蓄積する危険な部位(特定危険部位:SRM)は、脳、脊髄、眼、回腸遠部位に限定されています。このようなことから、国際機関であるOIE(国際獣疫事務局)の基準でも牛肉は食べても安全なものとしています。
13年10月18日以降、日本では安全な牛肉を提供するため、出荷されるすべて牛に対しBSE検査が実施され、さらに、SRMについては、BSE感染の有無にかかわらず除去し、焼却しています。
Q5. BSE検査とはどのような方法で行うのですか。
A.
BSEの検査は、免疫反応を用いるものと、実際に脳を顕微鏡で観察する方法とがあります。
免疫反応を用いる方法には、エライザ法とウエスタンブロット法がありますが、食肉衛生検査所で行う第一次検査にはエライザ法が用いられます。この検査は、短期間で結果が出ますし、感受性が非常に高いため、最初に行うには最も良い方法とされています。
しかし、感受性が高いので、1頭も陽性牛を見逃すことがない一方、BSEでない牛でも陽性の反応が出ることがあります。
このため、第一次検査で陽性牛が発見された場合は、より精度の高い確認検査(第二次検査)が必要で、これにはウエスタンブロット法が用いられます。第二次検査では、ウエスタンブロット法とともに顕微鏡で脳を調べることも行われ、第二次検査で陽性となったものがBSEと診断されます。
Q6.
「背割りが問題」という話を聞きますがどういうことですか。
A.
日本やヨーロッパ、アメリカなど世界のほとんどの国のと蓄場では、牛を解体するために、体の中心で左右に二つに分ける作業が行われますが、これを背割りと言います。この時、背骨も二つに切り分けられることで特定危険部位である脊髄に傷がつき、牛肉に異常プリオンが付着し汚染されるのではないかと心配する声があります。
しかし、作業に当たっては、脊髄を傷つけないよう細心の注意が払われ、脊髄はきれいに取り除かれた後、高圧水で洗浄されるので牛肉が汚染されることはありません。
Q7. 牛を原料とした加工食品は安全ですか。
A.
加工食品に用いられる牛エキス等の牛の原料は、BSE検査により、安全が確認されたものです。さらに、脳や脊髄などの危険部位については、BSE感染の有無にかかわらず除去し、焼却され、食品の原料として用いられることはなくなりました。
なお、厚生労働省は、すべての関連食品について点検するよう製造業者・加工業者を指導し、その結果をホームページですべて公表しています。
Q8.
最近日本人は肉を食べ過ぎているのでしょうか。
A.
最近、日本人は脂肪を取りすぎているから、動物性食品は控えるべきだと言う意見がよく聞かれます。しかし、日本人の脂肪摂取量は1日60gで、肉の消費を健康のために減らすべきとしているアメリカ人(140g)の1/2以下です。
戦後、飛躍的に日本人の寿命を延ばしてきた背景には動物性食品の摂取量の増加があるとされています。現在、日本人の食事は動物性脂肪と植物性脂肪のバランスがよいことが高く評価されています。
したがって、今のところ平均的な日本人の食生活においては食肉の摂取を減らす努力をする必要はないと考えられます。
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